純ホラクラシー組織の運用法のすべて

scouty代表の島田です。scoutyはアメリカで発祥した「ホラクラシー組織」という形態をとって運営されています。今回はscoutyの実運用例を含めて、ホラクラシー組織とは何か、どのような形で運用されているかをご紹介します。

ホラクラシー組織に関する誤解

日本では、一般にホラクラシー組織というと

  • 上下関係の無いフラットな組織
  • 自由度が高く、ルールが少ない組織
  • 情報がオープンな組織

といった特徴をもつ組織として認知されているようですが、これはアメリカで発祥した本来のホラクラシー組織の定義とは異なります。

本来、ホラクラシー組織というのはHolacracy Oneの創設者であるBryan.J.Robertsonがアメリカで提唱した組織体系で、組織のフラットさや情報の透明性などの文化だけで本質づけられるものではありません。
実際に、Bryanも自著「HOLACRACY –  役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント」の中で

「ホラクラシーはフラット組織だ」とか 「ホラクラシーは階層的組織だ」 というと、誤解 を招きかねない。ホラクラシーで使う階層構造は、私達に馴染みの深い階層構造とはタイプも違えば、目的も違うからだ。

と説明しており、ホラクラシーが単にフラットな組織体系でないことを示唆しています。

ホラクラシーを一言でいうのなら、それは「ロール単位のガバナンスの表現と明文化されたホラクラシー憲法に基づき、組織のひずみを解消するプロセスを通じて権限分散を行った組織」のことです。ホラクラシー組織では、組織の機能を人から切り離し、「ロール」という形で定義します。ロールには「目的」「領域」「責務」が定義され、それは全員から見える形で明文化されます。各ロールは自分の「領域」に関しては自由に意思決定することが許されているので、上司の許可をとることなくスピーディに意思決定することができます。

こういった組織を前述のものと区別して「純ホラクラシー組織」(端的にいうとホラクラシー憲法に沿って運営されている組織)と呼ぶとすると、日本における純ホラクラシー組織の例は極めて少ないでしょう。scoutyは純ホラクラシー組織として2018年3月から半年間ほどホラクラシー憲法を導入し、運用してきました。次の節では、その運用の実態をご紹介します。

scoutyのホラクラシー組織図

実態を見ていただいた方が理解しやすいので、今回はscoutyのホラクラシー組織図を公開することにしました。これが、scoutyの組織図の全貌です(画像は記事執筆時点のもの)。

GlassFrog – scouty

https://app.glassfrog.com/organizations/13494/

GlassFrog(Holacracy One が運営しているホラクラシー組織管理ツール)のURLからは、各サークル内のロールやそのロールの責務、アサインされている人 といった情報をすべて確認することができます。

組織図というものは、普通「人」が構成要素となっていますが、ホラクラシー組織図においてその構成要素は人ではなく、「ロール」となります。実際、この記事執筆時では社員は20名に満たないのに対して、ロール自体は100以上存在します。

Bryanはホラクラシーについて、

ホラクラシーの目的は仕事を体系化することであって人を組織することではない。

と言っていますが、まさにそのとおりで、組織の構成要素を人ではなく組織の機能であるロールとするのがホラクラシーの本質とも言えます。

ホラクラシー組織における各人のロール

このように、ホラクラシーにおいては組織が回っていくために必要な機能をロールとして書き出し、明文化しています。各ロールは複数人アサインされることもあるし、一人が複数のロールを持つこともあります。そこに役職はありません。私は、役職というのはいわば「ロールのセットのステレオタイプ」のようなものと考えており、たとえば「CEOは資金調達を行ったりビジョンを作ったりする人」といったいくつかの機能集合に対しての固有イメージなのです。しかし、資金調達はCFOが行ったりする会社もあるし、CEOでもエンジニアリングをするようなタイプもいれば営業をするようなタイプもいます。このように同じ役職でも組織やフェーズごとにやることがコロコロ変わっていて、これを同じ言葉で呼ぶのは実はやや危険かつ大胆な発想なのです。実際に、CEOである自分がアサインされているロールは、以下のようなものです。

CEOであっても、写真が撮れればフォトグラファーでも何でもやる、といった具合です。PRサークルのロールアサインを行うのはPRサークルのLeadLinkなので、もし任命されたら辞退しない限りは社長でもやらなければなりません。

他にもいくつかご紹介します。これはPRをメインに担当しているメンバーのアサインされているロールです。

これはコーポレートをメインに担当するメンバーのロールです。

Trelloを用いたひずみの管理法

組織というのは、フェーズや人数・メンバーによって組織内の役割や部署が増えたり減ったりして、生き物のように進化していきます。通常の組織ではそれをリアルタイムに追っていくことはできないので、定義された組織図や規定と現実の組織の実態がどんどん乖離していきます。ホラクラシー組織では定期的にガバナンスミーティングが行われるので、組織の問題が次々と組織図とルールに反映されていきます。以下では、ホラクラシーの特色のひとつであるひずみ解消のサイクルをご説明します。

ホラクラシーにおいては、現実と理想とのギャップのことをひずみ(Tension)と呼びます。ホラクラシー組織ではこのひずみをゼロにすることを目指していて、理想は組織のフェーズに沿ってどんどん進化していくから、現実の状態が何も変わらなければひずみはどんどん生まれてくるということになります。このひずみを解消するのがガバナンスミーティングで、ひとつひとつのひずみに向き合い、それが解消されるガバナンス(ロールやサークル構造・サークルポリシー)を決定していきます。ひずみを解決するように少しずつ必要なロールが作られ、組織(図)が自然と変わっていくのです。

scoutyでは、Trelloを用いて自分が仕事をしていく中で感じた違和感やひずみを書き溜めていってもらうという仕組みがあります。

ガバナンス上のひずみというのは、たとえば「サービスのお知らせを誰が更新するのか不明確」「福利厚生に関しての相談・申請ルートがわからない」「現場の◯◯がインターンの給与決定に参加できていない」といったものです。また、ひずみは下記のようなテンプレートの内容に沿って作られます。

もともとのホラクラシー憲法ではガバナンスミーティングでのアジェンダ項目は事前ではなくその場で決めるというルールがありますが、scoutyは書き溜められたひずみを元に提案内容を決めていくという形で運用しています。

ホラクラシー運用によって得られた収穫

この運用形態になるまで紆余曲折がありましたが、ホラクラシーを半年間ほど運用してみて、少なくとも以下のような収穫・メリットを感じています。

  • 権限所在(誰に聞けばいいか・誰が責任を持つか)が明確化した
  • 誰がどの仕事をしているのかはすべて可視化され、新入社員加入時や採用時での説明がしやすくなった
  • 組織内のひずみはすぐ解決され、組織構成もすぐに修正されるようになった
  • 誰がロールにアサインされているのか明確になったことで、今まではなんとなくしていた「社長レビュー」のようなものがなくなり、現場が自律的に判断を下せるようになり、スピードが増した
  • 色んな人をLead Link にすることで社長にとっては手離れし、Lead Linkにとっては権限を持ち裁量権を持って自分のサークルを編成できるようになった
  • ロール内容が明文化されているので、ロールチェンジが楽になった

個々の専門性が高く、マネジメントされるよりも自分で考えて動く方がパフォーマンスが出る人が多い組織には効果を発揮する一方で、覚えるべき難しいルールや規定が多いのですべての組織にオススメすることはできませんが、うまくワークすれば組織の生産性は圧倒的に向上し、組織に対する不満も自動的に解消されることでしょう。

scoutyでの事例がこれから多く生まれるであろう純ホラクラシー組織のための参考・先例になることができればそれ以上に嬉しいことはありません。

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